五島列島5:島国に置いて海が人に与える様々な影響

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明日には五島列島を去らないといけません。これまでで一番天気がいいです。

最終日の俺だけは運がついてる。

宿である例の潰れたラーメン屋を出る。
そして、その隣にはレンタカー屋。

近すぎる。

これはもう運命的な出会いでしょう。

てなわけで車を借りて、福江島をもう少し回ることにします。

まず向かったのは堂崎教会。

赤レンガで造られた、荘厳で静かな教会です。
駐車場から海沿いを歩いて向かうのですが、天気がいい今日は、海がとても綺麗でした。昨日の天気なら中の下くらいだったであろう。

堂崎教会への道からの景色
堂崎教会への道からの景色

今日の俺は運がついている。

堂崎教会は1907年に建てられた、五島を代表する教会の一つです。
実はここは、単に「古い綺麗な教会」というだけではありません。

1873年に禁教の高札が撤去された後、堂崎の浜辺では五島で初めてのクリスマスミサが行われました。
その後、1877年には司祭が常駐するようになり、五島でのキリスト教復活の拠点となった場所です。

つまり、長い禁教の時代を終え、五島でキリスト教が再び表舞台に戻ってきた場所。

前回、潜伏キリシタンについていろいろ考えた後だったので、そういう歴史を知ってから見ると、ただの教会には見えません。

長い間、隠れて信仰を守ってきた人たちが、ようやく堂々と祈れるようになった場所が今なお残っている。

堂崎教会
堂崎教会

そして教会の先には青い海。

「こんなに綺麗な景色だと、自然を対象とした信仰の方が流行りそうなのに。」

などと、思考を巡らしながら海沿いを歩きます。

実際、スイスではマッターホルンに対する山岳信仰がキリスト教により弾圧された歴史もあります。

五島の景色も、負けていないと感じます。

続いて楠原教会へ。

こちらも赤レンガ造りですが、堂崎教会より濃い赤色。
隣には幼稚園があり、子どもたちの賑やかな声が聞こえてきます。

こちらの歴史もかなり重い。

江戸時代末期、大村藩の外海地区から移住してきた潜伏キリシタンの一部が楠原に住み着きました。

そして禁教が続く中、信仰を守っていた人々は捕らえられ、楠原の信徒の家が牢として使われたこともあります。
その後、水ノ浦の牢へ移され、棄教を迫る拷問を受けました。

現在の楠原教会が建てられたのは1912年。

鉄川与助によって3年をかけて建てられた、ゴシック様式のレンガ造りの教会です。
下五島に現存する教会としては、堂崎教会に次いで古いものだそうです。

100年以上前には、この土地で信仰を理由に人々が捕らえられていた。

その隣では、おそらくキリスト教系であろう幼稚園の子どもたちが何の心配をする必要もなく無邪気に遊んでいる。

そう考えると、今の平和な光景が少し特別なものに感じられます。

楠原教会
楠原教会

次は水ノ浦教会。

こちらは一転して真っ白。
五島の教会は赤レンガ、白壁、木造など、それぞれ個性があります。ここはガイドブックでもよく見るいわゆる「写真映えする教会」。

私が行ったときも、これまで訪れた教会とは明らかに人の数が違いました。

タクシーなどが次々とやってきて、人が入れ替わっていきます。

どうやら教会にも人気ランキングがあるらしい。

結局、人間は「どれだけ映えるか」に弱い。

水ノ浦の歴史も、江戸時代末期に大村藩領から移住してきた潜伏キリシタンに始まります。

1866年には水ノ浦の信徒が長崎へ向かい、大浦に教会が建っていることを知りました。

そして自分たちと同じ信仰を持つ人々が、長崎にいることを確認します。 

隠れて信仰を守ってきた人たちにとって、「自分たちだけではなかった」と知ることがどれほど大きな出来事だったのか。

想像するとかなり感慨深いものがあります。

ちなみに現在の白い水ノ浦教会は1938年に建てられたもの。設計・施工は、五島の教会建築で何度も名前が出てくる鉄川与助です。

水ノ浦教会
水ノ浦教会
水ノ浦教会
水ノ浦教会

その後は空海ゆかりの場所へ。

五島というと、ここまでずっとキリシタンの話ばかりしてきましたが、実はそれ以前から、この島は大陸との交流拠点でした。

遣唐使にとって、五島は日本最後の寄港地の一つ。

三井楽の柏崎には、空海の言葉「辞本涯」を刻んだ記念碑があります。

「辞本涯」。

「日本の最果ての地を去る」という意味。

ここから先は、もう日本ではない。

そんな場所から、遣唐使たちは命懸けで東シナ海へ出ていきました。

この日は青い海、広い空。

空海が見たであろう景色も、きっと大きくは変わっていないでしょう。

1200年近く前の人が、同じ海を見ながら旅立った。

そう思うと、なんとも感慨深いものがあります。

私も、目的意識を持った旅をしたいと思います。

「辞本涯」

ただ、「旅立つ」というだけでなく、死ぬ覚悟で何かを成し遂げる、とも読めるような言葉です。私も休職が終わったら死ぬ覚悟で何かを成し遂げないといけません。

なかなかな覚悟を決めさせられる景色でした。

海は人を強くする。

辞本涯の碑
辞本涯の碑

続いて西海国立公園の高浜園地へ。

ここがまた、とんでもなく綺麗でした。

4月でなければ海水浴をしたくなるような海。

白い砂浜に、透明度の高いエメラルドグリーンの海。
五島を代表する海水浴場で、「日本一美しい海」と称されることもあるそうです。

しかも湾になっているため、海はかなり穏やかで遠浅。

車で向かっている途中に見えた景色があまりにも綺麗だったので、思わず車を停めました。

レンタカー様様です。

駐車場も広く、夏のシーズンにはシャワーや海水浴の設備も整うようです。

昼食用に持ってきていたりんごを丸かじりしながら、しばらく景色を眺めます。

旅行先で綺麗な海を見ながら、りんごを丸かじりする。

悪くありません。

むしろ、かなり贅沢です。

まあ、予算の関係なのですが。

景色が良すぎて、さっき決めた「辞本涯」の覚悟を浜辺に置いて帰るところでした。

海には、人を強くする力がある。

そして、どうやら人を骨抜きにする力もあるようです。

青森のりんご
青森のりんご
高浜園地
高浜園地

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